他職種に就いてから活用できた法務経験TOP10

いつもの方もお久しぶりの方もはじめましての方もいらっしゃいませ。coquelicotlogと申します*1

今日もハンバーグの作り方です!*2 f:id:coquelicotlog:20191205232834j:plain 嘘です。一応レシピ的なものを書くと、最近保育園から帰宅したら「おてつだいする!」と台所に攻めてくる2歳児の労働力をポリ袋に入れたひき肉にぶつけてもらって、フライパンにそのまま絞り出してチーズを絡めて焼いた品です。

法務界隈でAdvent Calendarが流行りだしたのが多分2013年頃で、そのころ私がちょうど法務を離れてしまったので実はこれがAdvent Calendarに書く初めてなのではないかと思います。 今回裏ということで比較的エントリしやすかったのでノリでエントリーしてしまったのですが、できれば裏らしいちょっと毒のある感じのことも書けると面白いかなと思っています。基本的にはそういう人間です。

自己紹介

出産後転職して法務をやり coquelicotlogの人生棚卸:法務編 - coquelicotlog

いろいろ考えてコンサルに転進し coquelicotlogの人生棚卸:転進記 - coquelicotlog

配偶者とのtwo-body problemを避けるために転居転職したあと大学院に進学し 34歳ワーキングマザーが大学院に進むまで - coquelicotlog

第二子を産みつつ修論を書いて 4ヶ月児を育てながら1ヶ月で3万字以上書いた私の方法 - coquelicotlog

復職の後、転職と博士課程への進学を同時にやって 博士後期課程に進学します - coquelicotlog

「私は何者か」を時折問い直すことについて - coquelicotlog

いま学生とコンサルやってる人 です。

われながら濃いな!と思う紆余曲折ですが、この基礎を作ってくれた大きなピースが法務経験だと思っているのでいつまでも法務クラスタにおります。

活用できた法務経験TOP10

さて本題にて、予告では活用できた経験TOP10を名のりましたが、当方の業務も研究も夫の仕事も立て込んでおりまして、うちの小学生が幼児を見てくれている時間に音声入力で一気に書き始めるところから始まっております。勢いで書く部分もあると思い、もしかしたら数も足りなくなるか溢れるかもしれませんが、その勢いもまた良しかなと思いこのまま書き進めていきたいと思います。 ちなみに修論を書いたときのメソッドを利用して音声入力をかなり多用しております。表記ずれを揃える努力はしますが多少見苦しいところがあってもお許しください。 あと順位つけにくかったので順不同です。

契約書が怖くない

何よりもやはり業務で契約書が出てきても恐ろしいと思わないというところがあります。結構同僚を見ているとNDAが出てきただけでめんどくさい人も多いようなので、実際私もめんどくさいとも思いますが、ある程度対応のパターンも見えますし、自分でやってる取引がどの程度の内容が必要なのかも感覚値があるのでそれに合わせてあらかじめ記載を調整することができます。

英語の読み書きならあまり怖くない

英文契約は日本語の契約書よりさらに長文になり読み難くなりがちですが、曲がりなりにも英文の基本契約もメンテナンスしてたので、 「おっしゃ大丈夫英文契約と比べれば!」 と思いながら英文の技術文書などにもとっくめます。

何で法務レビューが遅いのかわかる

わかるよ!人手足りないよね!でも1ヶ月は長いと思う!!

相手の権利も尊重しつつ落としどころを探れる

これはビジネスマンに関わらず必要な力ですが、譲れない権利について文書ベースで交渉した経験は生きます。売主買主、サービス提供側ユーザー側、いずれの立場でも契約を見ることがありうるので、自分自身を相対化できます。

法的な論点の仮説を持って動ける

もちろん法務の判断を尊重しますが、私自身である程度論点を整理した状態で交渉できるので、クライアントにも法務にもディスコミュニケーションが生じづらいのではないかと思います。これは法務経験のあるフロントの良いところだと思っています。

法律や法的概念が出てくる案件に対応しやすい

普通にコンサルをやっていても、ものによってはリーガルに聞くほどではないけれども、法律の用語を使ったり法律を読まなければならない時があります。これを調べるのにどれくらい時間がかかるかどうかならないかで仕事の効率がかなり変わります。 最近は私がある程度知っていることが今の職場のフロア内にも周知されてきたので、先日は新幹線で移動していたら電話がかかってきて、デッキで「この契約書の表現どうやって考えればいいと思う?」という相談に応じたりしていました。また、別の日は突然「これなんですか」と問われ、法の適用に関する通則法の存在について説明しました。多分聞いた人は一生懸命Google先生と戦わず私の30秒の答えで解決できたのだと思います。結構お役立ちな人になれます。

リスク感覚が身に付く

契約の話をするにしても取引の話をするにしても、ここまでいくといくら何でもやばいという感覚があると思います。法務というのは限界事例を想定する(長谷部先生的にいうと「平気な顔で奈落を見る」感じ)職種ですので、これはいろいろな案件であったり業種によって考え方は違いつつもやはり、法律の観点でリスク分析ができるところは1つ大きいと思います。 少しこれは両方持っている人の意見を聞いてみたいところでありますが、これに会計の知識もあると鬼に金棒なのかなと思うところはあります。ただ両方ともというのは比較的専門性の違いもあり有している人が少ないのかなと思われており、私はそちらにはチャレンジしないですが、法務知識と会計知識両方活用している人のご意見を聞いてみたい時があります。

複雑にこんがらがった事実を抽象化する力がつく

どのような法律相談もですが、問題が起きたり悩みがあったりするものは簡単には法的論点として抽出されません。 新しいサービスもどのような商流で、どこに法律が絡んできて、どのように利用規約を書き起こすかなどはすぐには見えません。 このような頭の思考錯誤、関係各所へのヒアリング、やりとりを言語化する力はどのような仕事をしても活きます。 比較的法務はこのような職責を担うことが多いのかなと思われ、いまだにこの経験は仕事をするにあたって生きていると思います。

「法律的に物事を考える」ことの価値

「物事を処理するに当って、外観上の複雑な差別相に眩惑されることなしに、一定の規準を立てて規則的に事を考えること」 ができるようになるのが、「転進記」でも書きましたし、「カフェパウゼで法学を」にも引かれていた末弘厳太郎先生の話で法学的素養の価値、法学を学ぶ意味合いとして述べられたところでもあると思います。

カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉

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いままで述べてきた「活用できたこと」はかなりの数がこの「法学的素養」に紐付くと考えています。法学教育について私が語るのもおこがましいですが、ジェネラリストとしての法学出身者を育てることの法学の価値をもう一度再考しても良いのかもしれません。

「法務」ではやりにくいことがやりたいのだと分かった

このようにいいことのたくさんある法務ですが、いろいろ考えて辞めましたし、前回の転職で法務職に就けなかった時点でもう私は、職務としての「法務」には基本的に進まないことにしました。

私自身は目の前の課題を解決するのも大事だが、社会構造を変えればより多くの人が幸せになる、という基本的な考え方をしているので、ルールメイキングが好きですし、

  • 正義に資する社会構造を考えること
  • 現実に動いていること、生きている人の感情も捉えること
  • デンノッホの精神で必要性のある変革を行うこと
  • それが法令や制度の形になる手助けをすること

に関心があるため、解釈論よりは立法論、立法論よりもさらに社会がどうあるべきかを考えてそこから社会課題を考え、実現可能な形に変換していく…というような思考を好むためです。

そして無資格への当たりが強い*3昨今、それでも法務でやれる、またはローや予備試験経由で資格を取るという方には法務道を邁進していただきたいですが、違う道に進んだとしても生かせる知識は多々あるので、行けば分かるさの精神で別のお仕事をやってみてもいいのではと思います。

ただ繰り返しになりますが、私自身は広義では法務に近いと思っていますし、法務経験を生かして社会に資することができていると確信しています。

最後に

おお、ちょうど10個だった!大学受験のときの200字作文*4で最後のマスを句点で埋める訓練をしていたのが活きました。

www.cloudsign.jp

を読みましたが、おそらくこういう議論が2013年になされていたなら私は狭義の法務を離れなかったかもしれません。ただ法学は奥が深くて、研究志向も強い私にとっては参入障壁が高すぎたので(絶対できないと言っているわけではなく自分が社会に何か爪痕を残せる気がしなかった)、今の研究分野に出会えたのを考えると、世の中には運命というものがあるのかもしれないと思います。 また、大企業を除いては、求められている「機能」のわりに待遇に物足りなさがあったり、マネージャーロールが結構少ないなと感じたりもします。多くを求めるのであれば、多くを待遇として返す形になっていくといいなと思っています。

明日はみみずく(https://adventar.org/users/26353)さんです!

*1:なんて呼べばいいの?と聞かれたこともあるのですがtwitterファーストネーム公開してるのでそちらでお呼びいただければ

*2:http://go-opro.hatenablog.com/entry/2019/12/05/083613

*3:https://twitter.com/coquelicotlog/status/1196822179737821184

*4:実は受験会場で自分の年から出題形式が変わって200字じゃなかった