現実への当てはめ

いま法律を少しずつ勉強し直しているが、 差し押さえ申し立て:山梨の弁護士、勝手に取り下げ-今日の話題:MSN毎日インタラクティブ を読んで、夫に、「これは何が問題か分かる?」と聞かれて分からなかった。
関係者によると、女性は97年9月、県内で不動産業を営む男性を相手取り、貸した5000万円の返却を求める民事訴訟を起こした。この弁護士が代理人になり98年3月に勝訴したが、貸した金の回収のため、女性側は同5月、男性が甲府市などに所有する計22筆の土地約6500平方メートルと建物5棟の差し押さえを同地裁に申し立てた。しかし、弁護士は06年10月、女性に無断で申し立てを取り下げ、差し押さえが解除された。 申し立ての土地は、県内の金融機関が根抵当権を設定しており、差し押さえによる回収は実際には難しい状況だったという。このため、同地裁が取り下げを打診したとみられる。
下線部がポイント。 民事執行法の、
(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置) 第六十三条  執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。 一  差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。 二  優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。 2  差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。 一  差押債権者が不動産の買受人になることができる場合      申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供 二  差押債権者が不動産の買受人になることができない場合      買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供 3  前項第二号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。 4  第二項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。
に該当していたのだろう、ということだ。 だから、弁護士が取り下げよう、という判断をしたのはまあ妥当なのだろうけれども、
甲府地裁から取り下げを打診され従ったが、本人に伝えてから取り下げるべきだった」
との当該弁護士の発言の通りだろう。 法律の非専門家であるクライアントに、いかにこういう規定について説明し、納得してもらうか、というのも専門家たる法曹の業務の一つだろう。 それを怠ったら不信感を抱かれますよ、という典型的な例かと。