緊急事態宣言解除後の「日常」と、社会の不可避の変化について

14日に39県で緊急事態宣言が解除*1となり、多くの感染確認を出していた東京・大阪も減少トレンドが見える現状におきまして、職業人としても家庭における親としても、近づいてきた「日常」生活に向けた検討を進める必要を感じています。

各々の立場において気になるところは異なると認識していますので、最小限、私の観測範囲において記載をしてみたいと思います。お仕事ではないので網羅性は追求しておりません(Disclaimer)。

 

企業の対応

経団連が「経団連:オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン (2020-05-14)」を公表しました。

対応の詳細についても記載のあるもので、実際に自社の方針を策定する際にも参照される文書と認識していますが、やはり忘れずに前提条件として認識しておきたいのは、

緊急事態宣言下はもとより、緊急事態宣言が終了した段階においても新型コロナウイルス感染症の感染リスクが低減し、早期診断から重症化予防までの治療法の確立、ワクチンの開発などにより企業の関係者の健康と安全・安心を十分に確保できる段階に至るまでの間の事業活動に用いられるべきもの(協調筆者)

とされていることです。換言すれば、既に通勤を続けている企業も今後在宅勤務を緩和していく企業も、ある程度対策を取ろうとしている場合は双方において意識していく内容の例示であるともいえましょう。

 

この前提を元に、従前と異なるオフィス・働き方の風景が見えてくる内容として、

  • テレワーク(在宅やサテライトオフィスでの勤務)、時差出勤、ローテーション勤務(就労日や時間帯を複数に分けた勤務)、変形労働時間制、週休3日制など、様々な勤務形態の検討を通じ、通勤頻度を減らし、公共交通機関の混雑緩和を図る。
  • 従業員が、できる限り2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう、人員配置について最大限の見直しを行う。
  • 飛沫感染防止のため、座席配置などは広々と設置する。仕切りのない対面の座席配置は避け、可能な限り対角に配置する、横並びにするなど工夫する(その場合でも最低1メートルあけるなどの対策を検討する)。
  • 会議やイベントはオンラインで行うことも検討する。
    株主総会については、事前の議決権行使を促すことなどにより、来場者のない形での開催も検討する。
  • 採用説明会や面接などについては、オンラインでの実施も検討する。

などが顕著な変化です(ただ、既に現状において課題として挙げられていないわけがなく、各社各組織により取り組まれている内容でもあります)。

 

在宅勤務疲れが指摘され始め*2、前のようにオフィスで働きたいと考える人も多いと思いますが、感染の第2波・第3波が想定される*3現状において、旧来には復せないという認識で行動を変える方がリスク対応として望ましいように思われます。

  • 「対面である方が望ましい業務」
  • 「必ずしもオフィスに集まらなくてもできる業務」

を、企業側としても想定して環境を整える必要がありますし、働き手側としても「感染を広げず、しかし親密さを保っていく」コミュニケーション手法を模索していくことになるのではないかと考えています。加えて、主にオフィスワーカーについて策が検討されているのが現状だと思いますので、物理的にその「場」にいなければならない職種についても手当てがなされることを望んでやみません。

 

学校(想定は小学校)の対応

本音を言えば、我が家の小5は本当に「放置」に近い状況の中で休校の3ヶ月を過ごしたので、そもそもそんなに期待していなかった公立小学校に対する認識*4が地に落ちた状況であると述べたうえで、文部科学省が5月に入って出した通知、「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について(通知)*5」に目を通しました。

学校の運営は文部科学省が強権的にできることではなく、地方公共団体ごとに異なり、何より教育委員会が有する権限が一定以上存在します。

とはいえ前掲通知にて以下が感染の可能性が高いために行わないと記載されたのは、これまで主に公立学校である種漫然と継続してきた習慣を一掃する効果がありうると考えます。

  • 音楽科における狭い空間や密閉状態での歌唱指導や身体の接触を伴う活動
  • 技術・家庭科における調理などの実習
  • 保健体育科における児童生徒が密集する運動や、近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い運動
  • 児童生徒が密集して長時間活動するグループ学習
  • 運動会や文化祭、学習発表会、修学旅行など児童生徒が密集して長時間活動する学校行事

これらはある意味で学校における集団生活の象徴でもあったわけで、例えば昨今問題視されていたにも関わらず継続される地域もあった組体操などは、今般のCOVID-19対応で継続が困難になる可能性もあります。

加えて、これは自分の範疇ですが、現状を踏まえて我が子の小学校のPTA活動は限りなく縮小されました。我が家においてはPTAへの関わりはほぼ強制されず、下の子が小さいことによる免除をいただいていたので実生活への影響は軽微です。一方、PTA活動が地域の活動を支えているような場合において、この変化がもたらす影響は小さくないものと想定しています。

 

「日常」は変わらざるを得ない

かくも私の生活に関わる狭い範囲でも、これまで変わって欲しくても変わらなかったことが、COVID-19という見えない圧力で、明示的に変化すべき事項として挙げられ始めています。そして在宅勤務など働き方の多様化にしても教育における集団同調的な行動が難しくなることにしても、この変化は悪いことばかりではないでしょう。既に政策上も必要であるとして、いろんな形で推奨されてきた内容でもあります。

ただこの「個別性」や「自主性」の反動として、自分で判断できない・個々に対応能力がない主体が確実に取り残される現実が見えています。経済的・家庭的に恵まれない状況を公的に支援するニーズは(予算や人員の関係において実現できていないとしても)一定程度認識されていると思いますが、一見普通に生活できている人々にも大いなる負荷をかけて日常の急激な変化を強いている状況が、いかなるハレーションを呼ぶのかを私はまだ見定めきってはおりません。

2月の一斉休校、4月の緊急事態宣言、欧米における多数の死者という事象が積み重なり、潮流としても「変化」は不可避になりました。ミクロではこの状況下で如何に生き抜くかを考えざるを得ませんが、それだけでいいとも思われぬので、自分の目で見て、多くのデータを収集し、何よりも視野を広く持って考え続け、行動し続ける覚悟を決めるしかないというのがこのところの感慨です。

*1:https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/14corona.html

*2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58577170Y0A420C2H46A00/ など類似の記事は多数

*3:収束の兆しを見せていた韓国が、ナイトクラブからの感染拡大で急遽対応を強いられるのを緊急事態宣言解除と同時に認識させられたのは、我が国における危機感を維持する方向になるのではないでしょうか

*4:背景としては自分自身の小学校生活が最悪すぎて記憶していないくらい面白くなかった

*5:https://www.mext.go.jp/content/000051148.pdf