赤い上腕動脈——昔の少年マガジンとスーパードクターKとK2の也宮と

(注1)当ブログの普段のトーンと違う内容になるかもしれません。というか多分なります。
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はじめに

すごい勢いでK2にハマった

Twitterで書いていたのですが*1*2、イブニング休刊からのコミックDAYSへの連載移籍に伴い、5/31まで全話無料キャンペーンが行われていたK2を、すごい駆け込みでかなりの話数を読み続けてしまい、久々に沼に落ちた感を味わっております*3

K2の概要と、なぜ大量の沼落ち民を産み出しているかは、


あたりを読んでいただければ一端はつかめるかと思います。色んな方面で沼ってる方がいらっしゃるようです。

無料期間が終わってしまったので課金は必要になりますが、
初登場:
K2 - 真船 一雄 / 第169話 拒絶(前編) | コミックDAYS
神回:
K2 - 真船 一雄 / 第200話 啓発(その6) | コミックDAYS(連続ものの第6回なのでここだけ読むのは実はオススメしない)
あたりの主人公の一人・一也と、超弩級の度量を持つヒロイン・宮坂さんの関係を見ていただいて、かつ、他にも一人先生始めとして魅力的なキャラクターと良質な医療エンターテインメントを楽しんでいただいて…、という作品概要のご紹介の上で、世の皆さまは色々なはまり方をされていらっしゃいますところ、私がハマっているところを勝手に書いていきたいと思います。まあまあネタバレを含みますので、そういうのが嫌な方は避けていただければ幸いです。

論文の仕上げに苦しんでいたときに別のことを考える機会をくれた、そしてこれからの楽しみ(だって連載継続中)をくれたK2。ありがとう*4

前段:私がハマった医療漫画

私は音楽でいうと小室世代、漫画でいうとるろうに剣心あたりが流行っていたときに中高生だったのですが、親族の関係もあり、定期的に読んでいたのは少年マガジン*5、単行本で買っていたのが少年ジャンプ系の漫画でした。

で、その当時単行本を買ってたのが

で、連載で読んでいてきちんと記憶があるのがと、そしてK2の前々作であるでした。

ただ、当時は劇画調の画風が引っかかり*6、読んではいたけれど読み込んではいない、という感じでした。高品先生(今作にも重要人物として登場)は覚えてましたが、話の細かいところは忘れておりました。
そしてK2の連載開始が2004年、それは私が就職した年であり、一気に漫画を読まなくなっていきましたので、作品が続いているのだという認識はありつつも、結婚・出産を経てフィクション作品離れしていたこともあいまって今回まで全く触れてこなかったK2。今回の一気読みをきっかけに、前作とのつながりを探るためにバラ買いでスーパードクターK(以下、「SDK」)とDoctor K(以下、「DK」)のエピソードも読み、こりゃすごいわ…ってなって余暇時間はずっと情報を吸い込んでいるここ数日です。

わたしのハマりどころを語る

青春もの・大学受験ものとしてのK2

長期連載となっていますので、大きな流れは本作を読むか、K2 (漫画) - Wikipediaで概要確認いただきたいのですが、ちょっとだけ大学受験にはリアリティを求めたい(荒唐無稽でなければいい、レベルですが)観点から見てもすごく良いなと思うのが高校生編・大学生編です。

主人公の一人・一也くんは諸事情あってN県(長野県っぽい)に居住しており、県立の進学校から帝都大学(理Ⅲって書いてるので東大がモデルかなと)に進学します。リアルとの違いとしては駒場に通ってる形跡がなく前期教養課程から本郷にいるっぽいように見えるところですが、まあそれはそれで。フィクションだし。
そしてこれも諸事情あって、理系科目が苦手なのに猛勉強して結果として一也くんと一緒に帝都大学に入るヒロイン・宮坂さんは、

  • 同じ県立進学校出身
  • 医学部進学を考え始めたとき、理系科目がネックだとしている(国語や英語の成績は良さそう)
  • センター試験で失敗する
  • 滑り止めの私立医学部を落ちまくる

のですが、物語中の描写として、高3でクラスが一緒になるのも理系クラスなんだろうなと思えますし、東大の二次試験は、当時のセンター試験(いまは共通テストですよね)を失敗しても、二次試験の際はかなり点数配分が圧縮されるので足切りされなければ致命傷にはなりませんし、文系ならば数学・理系ならば国語が他の受験生より得意であればアドバンテージになる認識*7なので、物語の都合として現役合格にしているのは重々承知しつつも違和感なく読めました(そんなとこ誰も気にしないよ、という脳内ツッコミ有り)。

同じ関心を抱く者としてのパートナー

Kの系譜の者としての物語上の宿命のみならず、医療者としてという点で本当に真摯で、心洗われる感のある登場人物の嵐なのですが、也宮(一也&宮坂さんの略)の関係、そして周囲の医学生諸々との関係で今回読んでいて本当によかったのが、医師として向上するための努力を一緒にできるために生き生きしている人間たちが描かれていたことです。
もちろん、恋愛ものであれば典型的なデートや結婚諸々なお話しでドキドキするような展開、というのも表現としてあると思いますが、相手より知らないことがある、できないことがあるときに食いついて一緒に歩んでいこうとする様子や、前作の主人公・KAZUYAの残したカルテを一緒に読みたい!というときの生き生きした感じ*8がすごく良くて、これだよ!これなんだよ!!とひとりで盛り上がっておりました*9

赤い上腕動脈——前作引き継ぎ・オマージュの巧みさ

今回、時間もなくてK2すらも全部は読めず、前作もまだ全部は買っていないのです(帰国したらやりたい)が、SDKやDKのエピソードや台詞をきちんと受け止めて昇華している箇所が多いと思うのです。

その中で一つだけ挙げると、前掲の宮坂さん初登場の話で、土砂崩れで一也は右の上腕動脈を切ってしまい、すぐに血管を縫合しない限り命に関わる、という状況に陥ります。そこで、刺繍が得意(そのときは医学知識もなく、本当にそれだけ)な宮坂さんが、後からK先生がたらりと汗を流して「ゴクッ…」という効果音とともに驚愕するくらい完璧な縫合をするわけですが、このエピソードはSDKのKAZUYAと前作ヒロインの一人・七瀬先生のものと重なっています*10。上腕動脈の縫合が赤い糸が繋がるかのように働く男女関係。面白いですね。

最後に

最近フィクションに関する感度が下がっていて、色々と新たな作品を摂取する気力がなかったのですが、偶然今回K2を楽しむことができましたので、勢いのままに書き連ねました。無料期間は終わってしまっていますが、機会があればこの熱さとエモさを一人でも多くの方に味わっていただけますと幸いです。

*1:Chihiro on Twitter: "身内の勤務先の関係で少年マガジンをずっと読んでたわたくし、スーパードクターKも連載時にある程度読んでいたわけですが、ついうっかり無料公開最終日前日にK2のことに気づいてしまい、この2日の余暇時間を全て突っ込んで半分以上読んでしまった。宮坂さんが良すぎるキャラであった…" / Twitter

*2:Chihiro on Twitter: "昨日から7年ぶりにフィクションものを吸い込むように摂取してしまっており、「家事→K2→事務英文メール→前作(ちょっとだけ買った)→論文の続き→K2」ってエンドレスループに入ってて、フランスで何やってるんだろう状態になってる。久々に若いころの感覚を思い出した…" / Twitter

*3:7年ぶり、前回はマクロスΔのメッサーくんとワルキューレの歌だった

*4:気分転換になって、今日は良い感じに英文の推敲が進んでる

*5:なので、ラブひなだったり絶望先生だったり、その辺りの時期の漫画についてはヤンキーもの含めて結構分かる

*6:CLAMPファンだった

*7:わたくし個人的には、文系の割に、数学が得意ではないにせよ壊滅的でなかったために比較的安定して合格圏にいたタイプだったので

*8:K2 - 真船 一雄 / 第261話 合宿(前編) | コミックDAYS

*9:わたくし個人的には、自分の研究について早口で某配偶者に語ったり、某配偶者と梅先生やボワソナード博士の足跡をたどったりしてるときの自身の中で沸き立つ感情をすごく思い起こせてエモい

*10:スーパードクターK - 真船一雄 / カルテ9 Kの右腕 | コミックDAYS 。K2で七瀬先生が登場する回も、何というか、すごいとしか言いようがない