年始からNetflix発で一大ムーブメントを起こしているという近藤麻理恵さんの片付け番組。
私は自他共に認める片付けられない系人間、しかし18歳で実家からは離れているので自分で片付けない限り散らかる一方という状況もあり、片付け本を読むこと自体は好きで、こんまりさんの
- 作者: 近藤麻理恵
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2010/12/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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も発売当時に読みました。
(来月改訂版が出るらしい)
ただこんまりメソッドが私自身の実践に繋がり難かったのは、まずは「衣服」を片付けてときめきの感覚を養う、という方向性だと理解した中、私は、現代の社会においては衣服を身につけて活動しなくてはならないし、着ないと特に冬は寒いので服を着ている、という人間なので、ときめきでは判断できなかったから…、と考えていました。実際、着ていてチクチクせず、洗濯でき(できれば乾燥機でもオーケーだとなお良い)、楽な格好であればいいと思っております。
しかし今回、
のEpisode1を視聴して、この片付けは「自らの価値観を問い直す手段」であって、服でspark joyがないのだとしても何らか類似の感覚を身につけて、やってみる意味はあるかも、と思いました。
Tidying UPが巻き起こした議論、社会的盛り上がりの意味合いの解釈はすごくたくさん書かれているのでそちらに譲る*1として、私はEpisode 1に出てきた「幼い子どものいる夫婦*2」を考えるにあたって、この片付けと営為は、大変肝の部分をついているように思われました。それは、多くの夫婦が自分の手に取れる範囲で解決できるからです。
各家庭、事情は違って、家事を半々にする家庭もあれば帰りが遅くて不在でワンオペをしなければならない人もいるでしょう。フェアかつ互いの心からの納得は必要だと思いますが、タスク管理をして本当の意味で半分ずつにすることだけを「分担」とするのは実は苦しさを増すのではとも思われます。
この多様な家庭像を踏まえても、片付けは(しんどさはあっても)自分たちで変化できることです。少なくともゴミ袋を準備して、物に触れてときめきを確認して、残す物は収納し、ときめかない物にお礼を言って捨てることはできる。しかし職場や社会はなかなかそうではありません。自分が多少もがいても、変わらないものは変わらない。
ネタバレになるので全てを詳しく書く事はしませんが、Episode 1のクライマックスの一つとして、妻の涙と、夫の苛立ちというかフラストレーションがインタビューに対して吐露される部分があります。
これは夫婦ともに家庭(精神的な意味でも物質的な意味でも)にコミットがあるから感情が動く、そしてそれを夫婦ともに解決しようとしているから、片付けでどんどん癒やしを得られるのだと思われました。
自分たちの家庭を整えるということは、すべて夫婦で共同作業する必要はないですが、価値観を語り合い、自分たちのパートナーシップを成熟させる過程を経ていかないといけないものです。特に、子どもがより大きくなり、自分たちの人生も方向性を定めなければならない場面が増え、価値観を持って夫婦で進んで行かなくなければならない局面は歳を重ねていくごとに増えていきます。Tidying Upのこのエピソードでは、2歳と4歳の幼児のいる家庭でした。2歳差育児は大変だと思うし、それ以外にも諸々の事情踏まえて困難はあると思います。ただ子供が大きくなり、物理的な手間がかからなくなっても、別の困難、解消しなければならない課題は発生してくる、とはよく言われる話です。まあしっかりした3年生を持つ我が家であっても悩むことは多々あります。どのくらいゲームをやらせるか、どういう本を読んで欲しいか、教育をどうするか…。子ども本人とも討議が必要だし、彼女の論理と思いを受け止める過程を持ちますが、その前段として両親の方向性はすり合わせないといけません。自分の暗黙含めた価値観が問われます。
これまでの問題認識を受けて、Konmariには二つの効用がありそうです。
- どういう家庭にしたいかの夫婦間の考えを再考できる
- 純粋に片付くので、生活にゆとりが生まれる
1点目は、我が家の話に引き寄せてしまうとまあまあ話せていると思いますが、それでも具体的な検討事項があるときのほうが考えが深まるので、片付けはいいきっかけになりそうです。
2点目は、うまく片付いて家事が楽になれば、家にいる時間が長い人でも、仕事で時間がない人でも、時間の余剰が生まれて他にやりたいことをやれるだろう、ということです。
そして、確かに今回番組になっているような片付けは時間もマインドシェアも取られますが、我々はこんまりさんほど片付けも好きでないし、プロでもないので、一生に何度もやる必要はないでしょう。むしろ家庭になんらかの不具合、淀みが生じたときに、立ち止まって解消の手立てを講じる余裕がないことの方が不健全であろう、と、これは我が身を省みているところです。
多くの人がこの流行について反感含めて刺激され、語りたくなっているようです。こんまりさん本人について、アニミズムなど日本的と言われる要素が受け入れられていることについて、この2019年のこのタイミングでspark joyを欲する社会的背景について。これはこれで面白いので、色々と読んでみたいところ。そしてまだEpisode 2以降を見ていないので、英語の勉強がてら見てみようかと思っています。
*1:例えばhttps://wired.jp/2019/01/20/marie-kondo-self-optimization/
*2:日本でも片付け番組は見たことがあり、同じようなシチュエーションのものをワイドショーでもやっていたけれど、夫も一緒に片付けていた形態はあったか?と思ったりも