作成者不利の解釈準則

あけましておめでとうございます。松の内も過ぎ、1月も半ばのご挨拶となりました。 なかなかこまめには記載できませんが、書けることを、書ける範囲で記載して参りたいと思います。 さて、最近、中国関連の契約等々を扱う業務をしているのですが、最近、以下の条項の存在を知りました。
中華人民共和国契約法第41条 「定式約款に関する理解について争いが生じた場合、通常の理解に従って解釈しなければならない。定式約款につき2種類以上の解釈が生じた場合、約款を提供した一方に不利な解釈をなさなければならない。定式約款と非定式約款条項が一致しない場合、非定式約款条項を採用しなければならない」 (翻訳文は  http://www.fsa.go.jp/news/20/sonota/20080724-2/02-6.pdf  から) *1  *2
先達にご教示いただいたところ、こちらはContra proferentem(作成者不利の解釈準則)の表れであり、コモンローの準則が中国の成文法として表出しているものである、ということが推認されました。 約款作成・提供側としては、
  • 解釈の余地のない明解な規約とする
  • ということを考えていくしかないわけですが、なかなかそうもいかないわけで、その場合は、
  • 顧客の解釈を提示されたら、その解釈に従わねばならない
  • という事態が生じ、個々の顧客ごとに解釈が異なる…となると、幅広く提供する約款であればあるほど取り扱いにおいて収集がつかなくなるのでは、ということが容易に想定できます。 まだまだ検討点は多そうですが、中国において約款を用いた契約を行う場合にチェックする項目として、さらに調査していこうと思った次第でした。 関連して、この件を調べようと思って、手近にあった中国法関連の書籍を管見するに、直裁的に本件について(特に、中国における約款契約について)詳しく述べている書籍を見いだせず…。(存在しないのかもしれません) 今は、 [amazonjs asin="4502050105" locale="JP" tmpl="Small" title="中国契約マニュアル―主要契約条項の日中対照文例集"] や、 [amazonjs asin="4785719990" locale="JP" tmpl="Small" title="Q&A 中国ビジネス法務の現場〔全訂版〕"] を手元に置いている感じなのですが、ある程度法制度や、できれば立法経緯等まで深く知りたい、と思ったときに参照できる本を探しておきたいところです。

    *1:原文は、「第四十一条 对格式条款的理解发生争议的,应当按照通常理解予以解释。对格式条款有两种以上解释的,应当作出不利于提供格式条款一方的解释。格式条款和非格式条款不一致的,应当采用非格式条款。」

    *2:アクセスしやすい中華人民共和国契約法の翻訳としては、http://www.e-tangshan.cn/houritu/hetongfa.pdfがよく用いられるという認識ですが、今回あまり訳文が好みでなかったので、他のところから引用いたしました