「ルールを変える思考法」

明日までのKindle本冬のセール対象だったこともあり、 [amazonjs asin="B00FMI2XJQ" locale="JP" title="ルールを変える思考法 (角川EPUB選書)"] を読みまして、感想をば。 タイトルが「ルールを変える思考法」ということは、本書の、
ルールとは「変えられるもの」です。それも、自分が有利なようにルールを変えることこそ、現実社会での競争の必勝法なのです。
という記述、そして、
既存のルールにただ従っていたのでは、新規に参入した者は絶対に勝てないシステムになっていることがある。しかし、そんな状況でも「ルールが変わるタイミング」「ルールを変えられる瞬間」をどこかで見つけられることがあります。 (中略) …時代が移り変わって環境が変化すれば、既存のルールや決まりごとが最適解ではなくなっていることはよくあります。そうであれば、そのルールに従っているのは合理的ではありません。だからこそ、原理原則を見直した上で、ルールを再検証する姿勢が大切なのです(強調は引用者による)。
という、「ルールに対してどう立ち向かうか」の視点が、川上さんのやってきたゲームを具体例にしつつ記述されていくところに現れています。 シミュレーションゲームの中でルールを変えるに至るまでの思考過程や行動、現状のシミュレーションゲーム等が与えられたルールの中でいかに楽しむか、というものに変わっているのではないかということ、思考力を試すゲームが今後また流行ってほしいということ。 自分が楽しむものとしても、子どもが楽しむものとしても、ゲームに対する考え方は何度か噛みしめて、実生活にも生かしたいところです。 また、新しいルールを決めるからこそ「原理原則」を理解して見直し、「再検証」する、ということは、新奇なものを了とし、それに合わせて突っ走ることもままある新産業ではありますが(そして自分自身「スクラップアンドスクラップじゃーーーーー」という気分になることはありますが)、あるべき姿に至るまでの粘り強さ含め、必要な営為であろうと思います。 その他、ビジネスに関連する記述で心に残ったところとして、
「儲けることばかり考えていてはダメ」というのは,道徳の話ではなく科学の話です。後先を考えずに儲けようとしているのでは、論理的に考えてサービスの継続が不安定になり、失敗につながりやすいということです。
これまで僕は、何かの仕事を始めるときには必ず、それが〝格好いい物語になるか〟を考えながらビジネスプランを練ってきました。それはつまり、これからやろうとしているビジネスが「社会や業界にどんな意味や役割を持っているか」、あるいはそれが「歴史的に見てどういう意義を見出せるものか」を考えるということです。
という記述がはっきりと書いてあることは、年末に「世界を変える」とか書いちゃった私としては、どことなく背中を押してもらえた感がありました。 他には、優れたゲーマーである社員との鼎談にあった
「興味がない人」に伝えようと思うんだったら、調べる努力がいらない仕組みじゃないと難しい
という一節、また、
世の中が「ロジック」や「システム」に支配されるようになっていき、人間個々の価値観や多様性が失われていったとしたら——?そのとき人間は〝ただの素子〟にも近い存在になるのではないかという不安
の記述から始まって本書の結語に至るまでの哲学的ですらある論の運びは、大変理解できるところが多く、新年の読書としては大変いいものを選んだと思います。 本日1/5まででしたらセール中ですし、そうでないときであったとしても、特にゲームも好きで、ネットにも生息していて、そして世界の中で何かストーリーを持って生き抜きたいと思っている方は、一読されて損はないのではと思います。