お久しゅうございます(この書き出し、何度目だろう)。
日々の荒波(仕事研究家事育児語学)に揉まれて書いておりませんでしたが、そういえば来月Advent Calendar書くじゃんと思い当たり、リハビリがてら書いてみます。
さて本日、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~」が公開されました。
法務に関与するみなさまの中では比較的大きくベクトルの異なる(暗喩)論点などだと認識しています。
ちなみに私はいわゆる「法務」職種を離れて長くなりましたし、従事していた期間も知財と併せても4年程度です。とはいえこういう話はずっと関心を持っていますし、本業でも考えるタイミングは引き続きあるのが現状です。
そんなわたくしが当該報告書を管見いたしまして*1、思い出したのが数年前の企業法務戦士さんのエントリだったのでありました。
進み過ぎた「戦略」の紹介が恨めしく思えるとき。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~
我ながらよく覚えていたとも思いますが、それだけ私も周縁にせよ中核にせよこのことを考え続けてきたということではあります。
上記エントリは、「知財戦略」としてはある種「先進的」で、しかもそれに耐えうる規模のある企業の取り組みを一般化する弊害が指摘されていると捉えます。
その上で、
これらの会社の取組みはあくまで「最前線」の戦略、と位置付けられるものであり、決して一般的なプラクティスではない、ということは、記者も十分理解された上で記事を書かれているはず。
だが、日経新聞という媒体の性質上、知財の世界にほとんど触れたことのない経営者等も目を通す可能性があるわけで、そういった方々が自社との比較でこの記事を見た時、いかなる感想を抱くか、ということにまで想像力を少し働かせれば、もう少し、「普通の会社」とのバランスを考えた記事にできたのではないか、というふうに、自分には思えてならない。
とされています。
はい、ここで今回の法務機能報告書に戻ってみますと、
周知用資料として「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」を作成し、経営陣をはじめとする企業への周知・改革を促します。
ということで、「経営者」向けに取りまとめたことを強調されています。だからこその抽象度だったり視座の「高さ」だったりが見えているやに思われます。
私自身はこの報告書の方向性はなしとはしないのですが、
- どのくらいの企業規模で
- 既にどの程度法務組織ができており
- 現段階の経営者にどの程度理解があるか
でまったく先行きが異なってきますので、例えば「7つの行動指針」あたりは取り扱い注意だろうと思います。
加えて本報告書では、
「事業の創造」、「価値の創造」に重点を置く観点からの法務機能
を強調されているところも興味深く、これもまた昨今知財で議論されていることとの相似はあると感じております。
例えば「知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」の報告書では、
知財が経営戦略資源の1つであり、企業の価値創造のメカニズムに組み込まれることにより新たな社会的価値や経済的価値の創出に貢献するものであることを前提
にビジネス価値評価を検討しており、成果の一つである「経営デザインシート」自体は知財部門が使うことのみを想定はしていませんが、今後の知財人材にこのような観点を有しつつ知財戦略を立てることは望んでいるのかなと思います(久々にこのあたりの資料を複数読んでみております)。
とはいえ、「価値」をどう捉えるかですが、ビジネス価値という点だけでいうと、そもそも特許権を始めとする知的財産権はまだ、法務と比べると数値換算しやすかったと思われます。その知財であっても「新たな価値」を産み出す主体としての「変革」はなかなかに困難である中、では法務としてのビジネス価値を生みましょう、となると、抵抗感だけでなくスキルセット・マインドセットの転換を強いられます。
その苦痛を強いてでも、いま在る「法務」を変えるだけのストーリーを示せるかが問われるし、何となく反応を見る限りは示し切れていないのかなぁとも。このあたりは識者・当事者のお話を今後も聞いていきたいと思います。
と、別の立ち位置からビジネスがしたいと思って法務を離れた者の雑感をお送りいたしました。たぶんAdvent Calendarで書く内容は多少続編になる予感がします。
この断想を書いていたら2歳児の夜泣きで中断を強いられ、暗い寝室でiPhoneにより書き続けるという経緯を経たので途中でちょっと文体が変わっているかもしれないですがご海容くださいませ。ではではまた。